手汗の原因と手汗レベルとは

手汗の原因と手汗レベルとは

大勢の人の前で話すときなど極度な緊張状態に置かれたときやスポーツ観戦で接戦の試合を観たときなど、手汗を大量にかいた経験は誰しもあることだと思いますが、こうした汗は一時的なものに過ぎず、気分が落ち着くと自然に汗が止まるので、日常生活に影響を及ぼすことはありません。

しかし、日常的に手のひらの発汗量が多く、握手するときに相手に不快な思いをさせてしまったり、大切な書類を汗で汚したりするなど、日常生活のさまざまな面に悪影響を及ぼしている人も少なからず存在します。

このように日常生活に悪影響を及ぼす過剰な手汗は、『手掌多汗症』という病気が原因で引き起こされている可能性もあります。

手掌多汗症とは

手掌多汗症とは、局所的に汗が過剰に分泌される局所性多汗症の一種で、日常的に手のひらに多汗の症状があらわれる病気ですが、手掌多汗症は主に自律神経の働きが不安定になることで引き起こされています。

自律神経とは人間が生命を維持するために必要な活動を意識せずに行なえるように、全身の各器官を自動でコントロールしている神経で、交感神経と副交感神経の2つで構成されています。

交感神経と副交感神経は心拍数や血流の調節も担っており、運動しているときには交感神経が活発に働きます。交感神経の働きが活発化すると気管の拡張と心拍数の上昇、さらに血圧の上昇が起こるため、呼吸による酸素の取り込みや血流が活発になります。すると酸素や糖分などのエネルギー源が全身の細胞に盛んに運ばれるので、激しい運動が可能になるのです。

また、運動しているときには体温が上昇しますが、このとき交感神経は汗腺を開いて汗の分泌量を増やすことで、体温の上昇を抑えます。
つまり、交感神経の働きによって発汗量も増加するというわけです。

本来、交感神経によって開いた汗腺は、交感神経の働きが弱まり、副交感神経の働きが強くなることよって元の状態に戻るので、汗の分泌量も少なくなります。
ところが、手掌多汗症では、何らかの原因で手の汗腺を開く交感神経が過剰に働き、副交感神経の働きが優位になりにくいため、日常的に手に大量の汗をかいてしまうというわけです。
このように手掌多汗症は主に自律神経の働きが不安定化することが原因で引き起こされているので、症状の緩和には自律神経を安定させることが有効です。

手汗レベル

ちなみに、手掌多汗症には手から分泌される汗の量を基準にした「手汗レベル」というものがあります。手汗レベルは症状の深刻度に応じて1から3までの三段階に分類されており、症状の深刻度に応じて対処法も変わってくるので、これを参考にして適切な対処をすることが大切です。

まずレベル1は手に汗をかいていることが自覚され始める段階で、手に湿り気を感じ、触ると発汗していることが自覚できます。光を当てると手のひらが反射によってキラキラと光ります。
この状態ではまだ日常生活に支障がありませんが、特に女性の場合、手の湿り気が気になって手をつないだり、握手したりすることができないこともあり、大きなストレスを抱えることも少なくありません。ストレスは交感神経の興奮を促すので、手掌多汗症の悪化を招いてしまいます。
汗の量があまり多くないこの段階では、ベビーパウダーをこまめに塗ることで手のひらの湿り気を取り除くことができるので、しっかり対処して手汗のことでストレスを溜めないことが大切です。

レベル2は手から汗が滴り出し、汗を目視で確認できるようになる段階で、ハンドルを握るときに汗で滑りやすくなったり、物を持ったときに汗で滑ってしまうなど日常生活に支障が起こり始めます。
この段階では本人も手のひらの発汗に対する強い不安や恐怖を感じており、そのストレスによって症状を悪化させているケースがほとんどなので、精神科で心のケアを受けたり、皮膚科を受診して手掌多汗症の治療をしっかりと受けるべきです。皮膚科では、汗を分泌する汗腺(エクリン汗腺)を塞いで発汗量を減らす塩化アルミニウムの水溶液が配合された制汗剤や交感神経の興奮を抑制する神経遮断薬などを必要に応じて処方してもらえるので、この段階になったら早期に皮膚科を受診することをお勧めします。

そしてレベル3は手から汗が大量に流れ落ち、大切な書類や試験の答案を汗で濡らしてしまったりするなど、日常生活に深刻な影響が出ている段階です。この段階になると本人は非常に強いストレスに晒されており、交感神経も些細なことで過剰に働くようになるので、手のひらの発汗量を減らすのは困難です。
皮膚科での制汗剤や神経遮断薬の処方では不十分であるケースも多いので、神経内科を受診して手汗の原因となる交感神経を切除する手術を受けることも検討されます。
また、最近ではボツリヌス菌から抽出した成分を注射するボトックス注射による治療も神経内科や美容外科などで行われています。こちらの治療はボトックス注射によって交感神経を一時的に麻痺させるものなので、治療の効果が持続するのは3~6ヶ月程度で、1回5万円以上かかる保険適用外の治療となりますが、手術より低リスクで手軽に治療を受けられるのが魅力です。